新・形式手法(SWの新たな捉え方) 第1回ブログ:ソフトウエアの現状

更新日:2015年09月15日

今のSWは、プログラム(以下PRGと記す)言語の進化と共に理解の曖昧さを包含する世界へと突き進んで来ました。そこでのPRGの進化とは、人間が意図することをPRG化する際、そのPRGを我々が日常使う言葉(自然言語)にできるだけ近いものにすることにより、プログラミング(以下PRGミングと記す)の負担を少しでも軽減できるようにと、その言語の用途への特化と併せ、多くの言語を作り出して来ています。自然言語に近づけるというその行為は、文学的な文章をどう理解したらよいか分からないように、自然言語の曖昧さをより多くPRGに取り入れられる(許容する)ようにして来てしまいました。その結果、図に示すような、スパゲティー状の超長文のPRGが出来てしまっています。

従って、一旦出来てしまったPRGから、設計者の意図するところを正確に読み解くことは、至難の技となっています。運良く超長文のPRGを読み解けたとしても、スパゲッティー状(複雑)化した文脈(SWの構造)が抽出される(見える)ことになりますので、その状況では、何処に文脈の不具合(SWに於けるPRG不具合;バグ・欠陥)があるのか見つけるのが難しいことになります。例えその不具合を見つけられたとしても容易に文脈の変更(PRGの修正・変更)をすることができないことにもなっています。何故なら、不用意に変更することで、かえって新たな文脈の不備(PRG不具合)を作り出してしまう恐れがあるからです。

ブログ執筆者の危惧は次のようなものです。正に、PRGが複雑化に突き進んでいること、PRGの全貌が分かる人が、そのSWに貼り付かなくてはならなくなっていることが容易に想像できます。このことで感じるのは、SWの死です。地震等で電算センターが被害を受け、SWが手元に残らなかった時、そのSWを作り上げて来た人が、既に病死していたり、あるいは退職して居所が不明になっていたとしたら、同じ内容のSWを作り直すことは、二度とできなくなるのではとの考えと、今後益々SWの活用が拡大したら一体どれだけ複雑な内容にPRG構造がなって行くのかと危惧するに至っています。実はこの危惧は、20年ほど前に感じたものです。だとすると今、その状況たるや、况んやをやと言わざるを得ない事態にあると思います。

言い方を変えると、自らが見つけ出せないPRG不具合が、山のようにとは言わないまでも、いくつもあるのではと考えるべきです。つまり、自分でも見つけられない不具合は、他人はもっと見つけることが難しいと理解すべきです。

それでは我々は今後どうしていくのがよいのでしょうか、以下コメントさせて頂きます。

諸悪の根源は、SWを科学としてあるいは工学として捉えたらどうなるのかの知見を持ち合わせていないことに帰すると言って、過言ではないと思います。このことは、世界中の共通の課題ですが、我々としてこれを乗り越えないことには、いつまで経っても自身の首を絞めかねないSWに於けるPRG不具合のリスクを抱えて生活して行くことになります。SWが科学的あるいは工学的な根拠ないしは拠り所がないままの世界になっていることを容認し、自分が何とかできなくても自分の責任ではないと考え、何も抜本的な方策に挑もうと我々がしないならば、太平洋戦争前、陸軍と海軍が暴走していることが分かっていても、誰も何も手を打つことをせず、破局に向かって行った昔の日本の軍部の状況に似ていると感じます。

これでは、日本が顧客指向の“ものづくり”を実践していると自負してみても、実際は、「物(ハードウエア、以下HWと記す)づくり」は出来ても、「心(SW)づくり」は勿論のことそれらの結果としての「ことづくり」はできていない国に成り下がっていると言わざるを得ません。是非とも、SWの本質を捉え、「こと(もの・心)づくり」が実践できる国へと脱皮して行こうではありませんか。

そこで提案ですが、我々がSWを科学ないしは工学として捉えるための取掛りとして、Lyee理論を研究してみることをリコメンドします。理論の提唱者は、根来文生氏という日本人ですが、情報処理学会からは異端児扱いされている人です。本ブログの執筆者は、この人との10年以上に及ぶお付き合いの中から、氏の主張するSWの捉え方を起点としそれを拡張することで、

  • SW品質の向上に資するだけでなく、
  • SW開発に於ける顧客指向の実践(SWの自由な改廃)、
  • 順序性を気にする必要のないPRGミング、
  • PRG言語間変換、
  • マルチコアや並列処理のためのCPU用SWへの既存SW資産の活用化

等々に、その考え方が適用できるのではとの認識に至っています。そして、その拡張した考え方を、新・形式手法という形で書きものすることを考えています。実際、「新・形式手法」がどのような意味を持つものなのか、その概念の成立性の検証(プルーフオブコンセプト、以下POCと記す)を、進めることが必要と考えております。本ブログ会員の皆様には、是非とも本ブログを読み続けて頂き、その結果、その手法に意味を認めて頂けるならば、ご支援を頂ければと思います。さすれば、我が国に於けるSWの科学ないしは工学の手中化に、大きく一歩前進できるのではと考えます。

因みに、Lyee理論をベースにその考え方を拡張した「新・形式手法」は、一言で言えば、SWを「IF“A”THEN“B”」の同一の形式として捉えるものです。また、“A”、“B”に於ける構造も同一の形式(「述語構造」と言う)を以て規定できるとするものです。既存のSWから、それを同一形式の構造を持つと見なした時、その構成要素に当たるものが何になるのか、PRG構文毎に抽出すれば、その抽出された情報が、構成要素の属性データと位置づけられることになります。言い換えると、従来型のPRGは、新・形式手法の世界で眺めた際、(属性の)データ(Excelの表)として取り扱われることになり、CPUで解析できる世界へと姿を変えることになります。その結果、このデータを出発点として、前述の新・形式手法は、多くのSWの解析あるいは開発の分野での各種応用へと適用して行くことができるようになります。

次回の新・形式手法のブログでは、「新たなSWの捉え方(新・形式手法);SWの構造」をテーマとして解説する予定です。

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