次世代物流システム(物流AHS) 第1回ブログ: 次世代物流システムのコンセプト
更新日:2015年09月14日
嘗て概念設計手法を用い目指すべきコンセプトの概要を検討した物流システムにつき、手法の具体的事例としてご紹介して行きます。日本の超少子高齢社会でも高い輸送効率を確保した「次世代物流システム」です。
先ず初めに、「次世代物流システム」のコンセプトを、そのコア要素を中心に紹介します。
- 「国内の横持ち輸送の為の新たな規格のコンテナ(インテリジェントコンテナユニットを略して“ICU”と仮称)」
の採用があります。このICUは、
- ・海上コンテナ程の強度はないが、トラックの荷箱よりは強度のある内航海運の船に身入り状態で3段なしは4段積みしても壊れないもの
を想定しております。従って、
- 海上コンテナ並びに鉄道コンテナより軽量なコンテナが、国内あるいはアジア大陸間に於いて、船・鉄道・トラックの各輸送モードを相互利用できるものとして、新たに規格されること
になります。ICUのサイズとしては、
- 大型トラックの荷箱サイズ(30フィートサイズ、“大サイズ”と仮称)、中型トラックの荷箱サイズ(20フィートサイズ、“中サイズ”と仮称)、小型トラックの荷箱サイズ(10フィートサイズ、“小サイズ”と仮称)の3水準
を想定しております。この結果、大型トラックの場合は、中サイズと小サイズ、3つの小サイズのコンテナが、中型トラックでは2つの小サイズのコンテナが乗り合わせ輸送可能となります。
更に、このICUには、
- 折りたたみ式の足を所持すること
が想定されています。グラップラーアームやクレーンといった積み下ろし装置がなくても、
- トラックにICUの昇降装置あるいはロングストロークのエアサスを装備
することがなされれば、トラックの駐車スペースで、ICUを他のトラックに引き渡すことが可能になります。
また、ICUは、
- 電子シールが採用されること
により、通関時に事前の開錠(盗難や蜜輸出/輸入)の有無が確認できるようになります。
更には、
- GPS機能の搭載により、コンテナの位置座標情報を自らのIDとセットにして情報センターで管理
することで、荷の運行状況が予定通りか、あるいは事故や車両あるいはコンテナの盗難の可能性と言った異常状況ではないかのリモートでの確認が可能になります。
次の構成要素としては、
- 「ICUの搬送機としてのトラック」
があります。
- 先頭車有人運転、追従車無人運転/自動追従運転の隊列走行を可能とするトラック
です。そのトラックは
- 電子連結機能を持つと共に、その機能が故障した際、先頭車による牽引を可能とする機械連結機能
も併せて所有しています。只、機械連結機能と言っても、
- 電子連結機能が正常に動作している際は、リジッドな連結ではなく、車間の変動を吸収する緩衝機構がついたソフト機械連結機能
のことを言います。トラックの隊列は、最後尾となる車両に運転者が搭乗している場合は、
- 走行中にも自動連結あるいは自動離脱が可能
としています。隊列の台数は、
- 最大3台までを想定
しています。何故なら、現行の道路交通法で認められている最大の被牽引車両数が2台であるからです。
トラックの大きさも、
- 大型と中型と小型のICUのサイズの種類に対応した車両サイズ
となります。
尚、走行中のトラックは、他の車両に対し
- 優先車両と法的に位置づけ、走行を妨害してはならないもの
とされます。
因みに、高速道路本線を走行するトラックは、
- 24時間稼働させると、1年で耐用総走行距離近くまで走行することになる
ため、
- 毎年、車両を更新する
ものとします。只、残存走行可能距離が存在することから、地域をデリバリーするトラックは、一般道を有人運転走行する車両となりますが、走行距離が本線上を走るトラックに比較し短くてよいため、
- 1年間本線走行した後の被更新車両を流用
することが想定されます。
その他の構成要素としては、
- 「片道3車線を有する高速道路」
を想定しています。
- 第1車線は、隊列トラックが他の走行車両に対し、優先走行するレーン
です。また、
- 物流拠点から本線に合流するアクセス区間と、物流拠点へと本線から離れるディグレス区間の箇所
があります。また、途中の物流拠点とアクセス区間/ディグレス区間との間には、
- ・最後尾車両が隊列を自動離脱して後、本線(第1車線)を離れ途中の物流拠点へと自動走行する為の側方ガイドレール付専用道と、その逆に、その物流拠点から発した最後尾車両として2台隊列の本線(第1車線)走行車両に自動合流する為の側方ガイドレール付専用道
が、存在します。
また、第3車線には、
- 次世代物流システムが、将来特急便サービスを提供するレーンと位置づけ、乗用車と同等の制限車速で走行が可能となるよう隊列走行でのレーンキープの安定性確保の為、道路表面からある程度の深さの位置に磁器ネールを埋設すること
も想定されています。
その他の構成要素は、高速道路上の物流路線の区間端末とその途中箇所に整備される④ 「道路一体型物流拠点」
です。物流拠点のあるエリアには
- 本線を跨ぐブリッジないしは地下道を有する構造
を有し、これにより
- 拠点をベースにトラックが逆方向の車線に入り、やって来た方向に戻ることを可能にし、トラックは指定区間をループ状に走行する
ことができるようになります。但し、拠点では、
- 拠点地域へ本線用トラックで運ばれて来たICUを、地域用のトラックに高速に積み替えると同時に、その少し先で、地域から発荷されて来た他地域へ送り込む逆向きの流れのICUを隊列車両となる本線用トラックに高速に積み替える機構と、それらの積み替えの受け渡しタイミングにズレが生じた場合のICUの一時保管の為の各向きの自動倉庫機能とを有する
ことになります。
最後の構成要素は、次世代物流システムのサプライチェーン全体をマネジメントする
- 「情報通信システムと情報センター」
です。
- ある地域に於ける荷主からの空ICUのデリバリー要請の受信とその地域デリバリートラックへの空ICUの配送指示
を行います。
- 次に、別の荷主からの積載済みICUの引き取りの受信と、空ICUの配送済みトラックへのその積載済みICUの引き取り指示
を行います。更には、
- ロールパレットや荷そのものへのRFID・ICタグの採用により、ICUを使った混載輸送での荷の積降し時の特定荷の出入り情報を、ICU側で記録することができ、その情報もICUの位置座標並びにIDの情報と併せ、トラック車両に引渡し、トラックは自身の位置座標とIDの情報とを更に併せた情報を、情報センターへ通知する
ことにより、個別荷単位での輸送途中のその所在情報の管理が可能となります。また、
- デリバリー順と逆の順序で個別荷をICUに搭載し、指定のデリバリー順序を仕向け先でのデリバリー車両に伝達
すれば、デリバリールートの特定とICUからのスムーズな荷降ろしが可能となります。
尚、トラックと情報センターとの通信手段は
- 無線通信による情報センターとの直接通信ないしは、路側に設置されたDSRCビーコンを介した間接通信、あるいは双方を利用した2重系の通信
を想定しています。
上記コンセプトを現実化すると次のようなうれしさが、社会に実現することになります。
ICUの誕生により
- トラックの荷箱サイズの通い箱としてICUが世の中に供給されることになります。
- その通い箱は、自家用として専用化(例えば保冷専用ICU、液体運搬用ICU、・・)することができ、種々のICUが登場することになります。
- このことから、トラック事業者は、従来自家用貨物であった荷を、輸送代行できるようになります。
- また、自家用貨物のためのトラックを所有していた企業は、その所有がICUに置き換わり、トラックのシャシー&フレームによる車両購入費や取得税や車検他の維持費等のコスト負担をなくすことができるようになります。
- 搬送機としてのトラックの荷箱重量がなくなるため、重量税が軽減されることになります。
- ICUの輸送モードを、道路輸送だけでなく、鉄道輸送、内航海運輸送のモードに自由に切り替えられるようになります。
- 荷主違いのICUを、荷の内容を秘匿した状態で混載輸送が可能になります。
- トラック側に車高調整機構ないしは荷箱昇降機構が必要ではあるが、足つきICUにより、路上あるいは駐車スペースでの車両単独での荷渡しが可能になります。
- このことにより、運転者の負担の少ない短距離のリレー方式輸送により、ICUの長距離輸送が可能になります。
- トラックの荷箱が、シャシーフレームと分離することにより、荷の積み降ろし時期を、荷主側の裁量で決められるようになります(荷の積み降ろし時期を、トラック事業者にしわ寄せすることがなくなります)。
- このことにより、荷発元あるいは荷受先でのトラックの待機時間の無駄が解消されます。
- ICUによる積載率の向上を図る時間的余裕が確保できるようになります。
- 地域での待機車両の滞留/渋滞の解消と、夏冬での運転席の空調の為のアイドル待機による無駄な燃料消費の解消とそれに伴うCO2低減が可能になります。
隊列走行できるICUの搬送機としてのトラック(キャブ&シャシー)の実現により
- 先頭車両以外の後続隊列車両での低燃費輸送が実現します。
- 隊列台数分の輸送生産性が向上します。
- 景気変動による荷需要の増減に追従して更新車両の増減を行うことにより、運転者の職を奪うことなく、輸送能力を変えられます(働く人に優しい物流を実現します)。
- 電子連結によるトレーリングサービスの利用により、高速道路上の幹線区間での運転者の就寝移動により、区間以遠への1名乗車による長距離輸送が実現できます。
- 物流拠点へのICUの入荷量の変動に合わせ、隊列台数を調整することにより、バッチ処理とならない定時刻発進を確保できます。
高速道路の利用により
- 陸上に於ける新たな定期高速道路幹線輸送路線が実現します。
- そのことにより、中小の運送事業者でもこの幹線輸送の利用により、中小事業者間の連携により長距離輸送が、運転者への負担なしを実現します。
- ・結果として、トラック事業者による交通事故低減につなかります。
高速道路一体型物流拠点の実現により
- 物流拠点立地の自由度が向上します(大都市圏郊外立地の必要性がなくなります)。
- それに伴い、物流拠点でのマテハン機能の併設も可能になります。
- 物流拠点での倉庫機能の追加により、指定日時配送が実現できます。
情報通信システムと情報センターにより
- 指定時輸送が実現します。
- 指定する荷の所在が特定できます。
- これにより、荷の盗難防止が図られます。
- 事前にロールパレット単位等での仕向け先の配送計画が立てられます。
- 輸送システムの運行状況が確認できます。
- これにより、システムの異常停止時に他の輸送モードへの乗り換え案内が可能です。
- 効率的なICU配送・引き取りが可能となります。
- 道路交通状況を自ら把握することが可能になります。
- 荷のOD情報が蓄積されます。
次世代物流システムの実現により
- 航空貨物のユニットロードを収納できるICUの欽定仕様を踏襲したフレームユニットを採用すれば、荷主にとって、陸(鉄道輸送・道路輸送)*海(内航海運)*空(定期航空)の輸送モード選択・組合せの自由度が大幅に向上します。
- ・日本とアジア大陸をICUによる一貫した物流システム圏として取り扱えるようになります。
- 人口減少社会に於ける高生産性輸送の確保が可能です。
- 先ものの輸送枠を売買する市場が可能になります。
- 自家用ICUメーカが出現します。
- 新たなICUリース事業が出現します。
- 高速道路というアセットをベースに、物流拠点提供や輸送サービスといった新たな事業への高速道路アセットの有効活用が図れます。
- 災害発生時の現地への必要物資の適確で効率的な送達を実現することができます(例えば、発電システム、バッテリーシステム、燃料電池システム、通信システム、ガソリン・灯油といった燃料や飲料水、蓄熱剤等の各種タンク、トイレ、浴槽等をICU化したもの、勿論、食料とその搬送のためのICU化した冷凍/冷蔵庫等の現地送達が考えられます)。
以上が、次世代物流システムのコンセプト(たたき台)とそれが作り出すうれしさになります。 これらから言えることは、次世代物流システムは、日本あるいは東及び東南アジア圏に於ける物流の在りように於いて、パラダイムシフトを引き起こす可能性があります。そういった意味からも是非日本として実現させたいコンセプトです。
次回以降の新物流システムのブログでは、概念設計手法での3つの思考や5つのキーポイントがどのように利用されているのかが分かる検討結果を順次紹介していきます。只、こういった内容は、概念設計手法(教科書)のブログの進捗に合せ、当該手法に関連する部分のブログ掲載と時機的な整合性を計りながら、紹介していくつもりでいます。