パーソナルエアクラフト 第1回ブログ; 今何故、パーソナルエアクラフトか

更新日:2015年09月14日

さて、このブログでは、パーソナルエアクラフトの実現を世の中に問う為に、そのコンセプトを構築して行きます。少しでも、面白いじゃないかと感じて頂けた会員がおられましたら、是非とも積極的にコメントの方、お願いできれば有難い限りです。

ところで、現在の航空機は、ライト兄弟の初飛行以降、ひたすら「より速く・より高く・より大量に」人・物を移送する、謂わば、“空の新幹線”のような公共交通手段としての発展を目指し技術開発が進んで来たと言えます。地上の道路を走る自動車が、バスやトラックといった公共的な移動あるいは輸送の手段として大衆に普及した時代から、最終的には単なる個人の移動手段に留まらず走る楽しみを享受する乗り物へと進展した如く航空機も同様に、そういった時代へと進展するに違いないと言っても過言ではありません。21世紀に入って10数年が経つことから、そろそろそういった時代に航空機も入ってよいのではないかと考えます。

しかしながら、現在の航空機を見渡してみても、誰でも安全に楽しく容易に操縦でき、空という3次元空間を自由に自然と一体となって飛翔できる個人が使用する航空機(“パーソナルな空の利用を実現できる航空機(以降PAC;Personal Air Craftと仮称)”謂わば“空飛ぶ車”の概念を持つ商品は世の中に量産の形では存在していないと言えます。

従って、我が国がこの市場に対し他国に先駆け、潜行して商品開発に臨めば、世界を席巻する欧米の航空機産業の市場に割って入ることなく、世界的規模の新たな航空機市場を手中にすることに繋がるものと考えます。

第2次大戦で敗戦国となった我が国は、戦後暫く航空機の開発を占領国アメリカから許されませんでした。そのことが尾を引き、嘗てのYS11や最近のUS2並びに現在のMRJの一部例外を除き、航空機の全機体開発は我が国の航空機産業界では実施されて来ず、戦後70年経っても全機体開発ができる産業として十分に育って来ていない状況と言えます。欧米の大手航空機メーカの下請けに甘んじたり、国内の防衛需要に依存したりして、何とか技術の蓄積を図っているのが実情だと思います。

 他方、我が国の自動車産業は、戦後、占領国による規制が科せられなかった為、トヨタ自動車に代表される如く今や欧米の自動車メーカを凌ぎ、高性能、高品質で且つ魅力的な自動車を、お値打ちな価格で提供できる技術を十分に所有するに至っています。

これら2つの産業の技術力を結集させることができ、“空飛ぶ車”という新たな概念の航空機である“PAC”を我が国のオリジナルな商品として全世界に送り出すことができるようになれば、国内産業へのその波及効果は絶大なものになるに違いないと考えられます。また、その航空機は全世界に供給されることになりますし、更には、従来にない事業・サービスでの新たなビジネスモデルを、国内外で創り出すことにも繋がるものと考えられます。正に、“元気な日本復活”のきっかけの一つとして大いに期待されるものになり得るのではないでしょうか。この航空機の実用化を、我が国の自動車メーカーに於いて実現するならば、正に豊田喜一郎氏が豊田自動織機製作所に於いて自動車の開発に成功して以来の快挙となります。豊田自動織機製作所が佐吉翁の“自動織機”の特許を英国の世界的な織機メーカに売った、正に織機メーカとしての絶頂期に、喜一郎氏は、自動車という全く畑違いの商品の開発の必要性を感じたと聞き及んでおります。佐吉翁と喜一郎氏以外の誰一人として、豊田自動織機製作所の人間で、織機以外の新たな商品である自動車の開発の必要性を「経営ニーズ」として感じた人は居なかったのではと思います。“ハイブリッド車”並びに“燃料電池車”の世界に先駆けた開発とその製品展開といった自動車メーカーとしての絶頂期にある日本の自動車メーカーに於いて、次なる時代での全く新しい商品“PAC”の開発に着手する経営ニーズは一体何時起きるのかと問われれば、「今でしょう!!」との返答になるのではないでしょうか。我が国の自動車メーカーはこのまま“自動車”という商品を造り続けていればよいとするのかどうか、自問自答すべき時期にあると思います。

我が国の自動車メーカーが“PAC”実現の「経営的ニーズ」を感じたいとするのであれば、先ずはそのことを確信する必要があります。そのためには、

  • 関連分野の専門家のお知恵をお借りし“空飛ぶ車”=“PAC”という新たな概念の航空機に対し、どのような事柄が要求されることになるのか要件として抽出する必要があります。
  • と共に、“PAC”が利用される社会から何が“PAC”に要求されることになるのか、その諸要件を明確にする必要があります。
  • 更には、それら諸要件の実現に内在する諸課題に対し、それらを乗り越える為の方策を検討する
  • と共に、その方策の実施計画をロードマップとして整理する必要があります。
  • 並行して、“PAC”が世に送り出された際の主な社会的な効果がどのようなもので、
  • どのような大きさの影響を与えるのかを分析し
  • 次なるフェーズである“PAC”の全機体開発へと結びつけて行く

ことが必要となります。

ついては、PACの技術開発や生産技術開発、そのプロジェクト完了後の全機体製造・販売事業等の主体への参画に関心を持つと思われる各関連分野の機関、大学並びに企業に声掛けし、“PAC”研究会といった場を作り、各主体より参加メンバを送り込んで頂くと共に、慶應義塾大学大学院SDM研究科内に設置のパーソナルニューモビリティーシステム・リサーチラボラトリー(PNMシステム・研究ラボ(仮称))に開発研究者を送り込んでもらうようにできないかと考えております

当然の如くPACの技術開発や生産技術開発段階では、多額の費用が掛りますので、各開発段階では、その主体として技術研究組合、有限責任組合(LLP)や有限責任会社(LLC)の設置、あるいは新たな株式会社や自動車メーカー内での社内カンパニーの設置をし、その主体に参加する各社から資金と出向者を募り、場合によっては国の助成により開発を進めることを目指してはと考えます。

世界に目を向けると、I-Con社、PAV-L社、Groenbrothers社、Cartercopter社など、パーソナルエアクラフトに繋がると思われる航空機を検討している会社が、続々と出現して来ております。そういった意味でも、我が国はパーソナルエアクラフトの検討を急がなければなりませんが、只、「パーソナルエアクラフトのブログを書くに及んで」でも言及した如く、過去100年の「空飛ぶ車」の失敗の轍をどうしたら踏まないで新産業を興せるか、その全てがパーソナルエアクラフトのコンセプトメーキング(概念設計)に於いて、正しい要求定義ができるかにかかっていると考えます。

次回のブログでは、どのようにしたら正しいパーソナルエアクラフトの要求定義が可能か、その考え方の枠組みにつき言及してみたいと思います。

以上

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