設立趣旨

世の中、今まさにサブプライムローンに端を発した金融不安が世の中を渦巻いている。金融や経済システムは、その全貌が見えない。
一方では、世の中の生活の在り様がどんどん変わって来ている。それに対し社会システムが追従できないでいる。年金給付不備問題、JRのSUICAのシステムダウン、全日空の予約システムダウン、三菱東京UFJ銀行の統合システム適用の大幅遅れ等々、枚挙にいとまがない。サービスの向上や変更に伴う機能追加や企業合併等によるシステムの統合化等により業務系あるいは基幹系システムと呼ばれる事業活動の為の分野のシステムがどんどん複雑化して来ている。
このことは、製品の分野においても同様である。何故なら製品には小型のコンピュータ(ECU)が組み込まれており、例えば高級車では、100個前後も組み込まれている。このことは、車というハードウエア製品をECUを通じソフトウエアが動かしていることを意味している。一説には、2015年には、車の中の組み込みシステムのプログラムのステップ数は1億ステップにも達すると言われている。しかも、それらECUが会話(システム連携)をし始めている。まさに複雑系に突入して行っている。今や製品の品質の中に、ソフトウエア品質が占める位置が大きくなってきている。そのため、ソフトウエア品質確保の為のコストも莫大なものになって来ている。
さらにこの複雑系への突入は、製品に組み込まれる小型のコンピュータのハードウエア(H/W)そのものの設計の分野においても同様の状況にある。コンピュータに行わせる機能自体が多くなっていることからLSI化やいわゆるSoC化しているのである。その機能数が極端に多くなって来ていることから、それら機能を作り出す回路間の関係の正しさや物理的な配置の整合性の確保をすること等が、人間業だけでは困難になって来た。ちょっとした設計変更も容易には行えない。そこでLSIの回路機能を定義するのにも、ソフトウエアが持ち込まれて来ている。しかし、このことは、前述の例で示したソフトウエア品質の問題を、この分野も同様に抱え込む結果となっている。
標記新会社の発起人及び役員は、上記分野での複雑化の中で起きている状況を、次の様に捉えている。

  • (1)システムや商品/製品に求められる要件/要求が、大変多くなっている
  • (2)それら要件/要求がどんどん変化する状況になっている
  • (3)それに伴い、システムや商品/製品は常に進化しなければならなくなっている
  • (4)進化でのシステムや商品/製品の妥当性確保には、当初の開発からその後の進化に沿った関係者の開発意図の推移を追う(トラッキング&トレーシングする)必要性が出てきている
  • (5)システムや商品/製品の開発及び進化の過程に於いて、多くの人の関与により多くの間違った意図(間違い)が入り込む状況が起きて来ている
  • (6)複雑化の中、一層、その間違いを見つけ出すことも非常に困難な状況になってきている
  • (7)更に、同様に複雑化の中、間違いを見つけても、それに対する修正が、システムや商品/製品の他の機能へ予測し得ない形で影響を与える事態(手を加えれば加えるほど、不具合が増す)を引き起こしている

以上のような状況の中、従来の職人的な人海戦術方式あるいは精神論的な品質確保の開発スタイルのままでは、早かれ遅かれ、複雑系のシステムの開発や商品/製品の開発は限界に達すると思われる。また、開発に従事する人は、人間らしい創造性ある仕事に従事することができなくなってしまう。この様な事態に至るのは、大変不幸なことである。 このことから、標記会社の発起人及び役員は、この様なシステムや商品/製品の開発に従事する者が置かれている状況を、抜本的に改善することを目指すべく、ここに標記新会社の設立を目指す。 抜本的な状況改善を実現する為には、「科学的な考え方の枠組み(“オントロジー”)」を、新たに導入しなければならない。その考え方の枠組みがどのようなものであるのかを追求し、それを具体化し、世の中に供給することにより、開発する人が、その考え方の下、人間らしい創造性豊かな作業を通じ、社会的なニーズを効果的に体現したシステムや商品・製品を社会に提供できるようにすること、引いては心豊かな社会の構築に貢献することが、標記新会社の使命である。。 当面は、目指すべき「科学的な考え方の枠組み(“オントロジー”)」として、以下のものを想定する。

  • (1)概念設計の考え方の枠組み
  • (2)システムの捉え方の枠組み(構造/クラスオブジェクト)
  • (3)人間の意図の枠組み(構造)/システムの状態遷移の枠組み(構造)
  • (4)(1)~(3)の関連性の枠組み

当面は、大きく、前述の3つの分野(業務系システム分野、組込みシステム分野、LSI・SoC分野)に於ける以下の商材の供給を想定する。

  • (1)概念設計支援ツール・サービス
  • (2)知識の記録・取出し支援ツール・サービス
  • (3)要求定義支援ツール・サービス
  • (4)ソフトウエアのデータ化ツール・サービス
  • (5)ソフトウエアの言語間変換ツール・サービス
  • (6)ソフトウエア構造解析ツール・サービス
  • (7)ソフトウエア分割ツール・サービス
  • (8)ソフトウエア診断(品質評価)ツール・サービス
  • (9)ソフトウエア不具合解析・修正支援ツール・サービス
  • (10)ソフトウエア最適化ツール・サービス
  • (11) ソフトウエア開発・保全ツール・サービス

追って、以下のものも、商材として想定していく。

  • (12)マルチコアコンピュータの為のソフトウエア開発支援ツール・サービス
  • (13)リコンフィギュアラブルコンピュータの為のソフトウエア開発支援ツール・サービス
  • (14)ファジーコンピュータの為のソフトウエア開発支援ツール・サービス
  • (15)ニューロンコンピュータの為のソフトウエア開発支援ツール・サービス

2008年11月11日
起草者発起人・設立時役員代表水谷仁